ロレックス
高級腕時計ブランドの中で最も有名で、販売数が最も多い。サブマリーナー、GMTマスターII、コスモグラフ デイトナ、デイトジャスト、デイデイトなど、数多くのアイコンモデルを発表してきたウォッチメーカーとして知られている。これらは50年以上も前にリリースされたモデルだが、誕生以来、意匠がほとんど変わっていない。ステンレススティールモデルだけでなく、プレシャスメタルのモデルやダイヤモンド入りウォッチなど、より高価なモデルの人気も高い。ロレックスは搭載するムーブメントのすべてを自社製造しているが、常にさらなる改良を目指し、基礎研究に余念がない。ヘアスプリングの材料となる合金も独自に開発されたものである。
ロレックス/オイスター パーペチュアル サブマリーナー デイト
より洗練されたグリーンのサブマリーナー
誰もが熱望するも、一握りの者しか手にすることができない。2020年にサブマリーナーの新世代モデルが発表されると、グリーンベゼルを備えたサブマリーナー デイトを求めて人々が殺到した。新型ムーブメントを搭載し、ケースも新しくなった新世代サブマリーナーは、これだけの人気を得るにふさわしい時計であると証明できるだろうか?
イェンス・コッホ:文 Text by Jens Koch
三田村優、マルクス・クリューガー:写真 Photographs by Yu Mitamura, Marcus Krüger
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto
[クロノス日本版 2021年5月号 掲載記事]
プラスポイント、マイナスポイント
+point
・高性能な完全自社製ムーブメントを搭載
・先代よりもエレガントなケース
・アイコン的なステータスを備えている
-point
・極めて入手困難
・マイナス傾向の精度
昨今、ロレックスのブティックに滞在すると、グリーンベゼルを備えた新作サブマリーナーを求めて訪れた客が店員から慰めの言葉をかけられて店を後にする姿を見るまで5分とかからない。しかし、これは需要が供給を大幅に上回っていることが人気の沸騰を加速させている要因であり、品薄状態は決して人為的なものではない。これは現在、ステンレススティール製モデルだけでなく、イエローロレゾールやゴールドのモデルにも言えることである。
2020年、サブマリーナーのすべてのモデルがリニューアルされたにもかかわらず、グリーンベゼルモデルの人気が極端に過熱しているのはなぜだろう。その理由のひとつとして、ステンレススティールケースモデルの中でこのモデルのみ、一世代前のモデルとの違いがひと目で分かるデザインを持っている点が挙げられる。先代モデルでは、セラミックス製ベゼルもサンブラッシュ仕上げの文字盤も緑色だったが、新作では文字盤が黒になった。このカラーコンビネーションは、先代よりもさらに一世代前のモデルで、03年にアニバーサリーモデルとして登場し、10年まで作られていた16610LVで見られたものだ。この頃のベゼルはまだアルミニウム製であった。
過剰人気のもうひとつの理由は、もともとグリーンベゼルのサブマリーナーがブラックベゼルモデルよりもはるかに人気が高かった点である。新世代サブマリーナーで16610LVに見られたエレガントなケースが再び採用されているのも興味深い。セラクロムベゼルが初めて使用された旧モデルでは、幅の広いラグとリュウズガードを備えた通称「マキシケース」が導入されていたからだ。
大きくなったオイスター
2020年にロレックス 偽物が発表した新世代サブマリーナーのサイズは当初、若干の混乱を引き起こした。ケース径が41mmとなっていたにもかかわらず、ケース径40mmの旧モデルと並べてみると新作の方が小さく見えたからだ。実際に計測してみると、ケース径は40.3mmから40.8mmと、わずかしかサイズアップされていない。新作はスリムになったラグと幅の広いブレスレットによって、旧モデルよりも視覚的に華奢に見えるのだ。オイスターブレスレットはラグ幅で20mmから21mmに拡大され、オイスターロッククラスプの幅も1mm広くなっている。
スリムになったラグを除き、新旧両モデルを並べて比較しない限り、全体的にはほとんど違いがないように見える。針の幅が若干広くなっているものの、今回のテストウォッチであるグリーンのサブマリーナーでない限り、その差はほとんど認識できない。リファレンスナンバー126610LVの末尾にある「LV」とは、フランス語でグリーンベゼルを意味する「LunetteVerte」の頭文字である。新作は先代の特徴的なサンブラッシュ仕上げを持つグリーンダイアルに替えて、標準的なラッカー塗装をポリッシュ仕上げした光沢のある黒文字盤を備えている。サブマリーナーにどちらが相応しいと考えるかは、好みの問題だろう。先代ではグリーンカラーの主張が強いのに対して、新作はより控えめな外観である。セラクロムベゼルインサートは先代と同じ色である。先々代に当たる16610LVでは、やや暗い色調のアルミニウム製ベゼルインサートが採用されていた。
改良されたムーブメント
今回の新作では、文字盤の「SWISS MADE」という文字の間にロレックスの王冠が追加された。この王冠は、先代モデルに搭載されていたキャリバー3135に代わり、構成部品の90%以上が改良され、14件もの特許を取得した新型キャリバー3235が搭載されていることの証しのようだ。とりわけ、耐衝撃性と耐磁性、信頼性がより強化されていることには注目したい。ローターの巻き上げ効率も向上し、フルパワーに達するのが早い。これは、ローターの支持にボールベアリングを使用することで実現した。周囲環境が静かであれば、耳を澄ますとボールベアリングによるローターの巻き上げ音を聞くことができる。
約70時間のパワーリザーブを備えた新世代キャリバー3235。自動巻き。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。
ユーザーにとって最も大きなメリットは、パワーリザーブが約48時間から約70時間に延長されたことだろう。これは、より長い主ゼンマイを格納できるように香箱の壁を薄くした上、スイスレバー脱進機の効率をおよそ15%向上させる革新的なクロナジーエスケープメントを搭載することで達成された。後者は、エネルギー効率の向上に貢献しており、ガンギ車とアンクルの形状を改良し、スケルトナイズされたフォルムによって軽量化が図られたことで実現した。LIGAプロセス(フォトリソグラフィ、電鋳およびモールディングを組み合わせた製法)で作られたニッケル・リン合金製のガンギ車は、磁気の影響を受けにくいことが特徴である。新しくなった天真も耐磁性の向上に貢献している。
ニオブとジルコニウムで構成される独自の合金で出来たブルー パラクロム・ヘアスプリングは、パラフレックス ショック・アブソーバー同様、すでに他のモデルでも採用されており、広く知られている。天真の縦方向のアガキはトラバーシング バランス ブリッジに設けられたネジで調整することができる。歩度の微調整をテンワの内側に取り付けたマイクロステラ・ナットで行うフリースプラングテンプと、ブレゲ式エンドカーブにより、ヘアスプリングは制約されることなく均等に伸縮することができる。
他のロレックスのモデル同様、残念ながら新しいムーブメントはステンレススティール製の裏蓋に隠されて見ることができない。だが、ロレックスはムーブメントの仕上げや装飾に手を抜くことは一切なく、ローターは部分的にスケルトナイズされており、ローター受けにはサンブラッシュ仕上げが、スティール製部品にはヘアライン仕上げが施されている。また、面取りされたエッジやポリッシュ仕上げのネジ頭なども確認できる。
自社規格を満たしたクロノメーター
ロレックスは2015年、精度に関する独自の厳しい基準を導入した。文字盤にある「SUPERLATIVE CHRONOMETER」という文字が、その高い精度を保証している。この文字がプリントされるようになったのは1950年代の終わり頃で、当時のロレックスのモデルは最上級性能認定を取得したクロノメーターよりも正確に動いていた。この後、最上級性能認定は公式評価機関からは授与されなくなった。現在、ロレックスの時計技術者たちは、ムーブメントの精度を検証する独立機関であるスイス公式クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)が発行するクロノメーター証明書に加え、独自の厳しい基準に則って、ムーブメントをケーシングした状態で日差がマイナス2秒/日からプラス2秒/日以内になるように、高い精度で調整しなければならない。
今回テストした個体は、ウィッチ社製歩度測定器で行ったテストではロレックスの厳しい要件を完璧に満たすことができず、平均日差はマイナス2.3秒/日だった。とはいえ、個々の姿勢で日差がマイナス1秒/日からマイナス4秒/日の間に留まり、最大姿勢差が小さかったことは喜ぶべきだ。
誕生から68年経つタイムレスなデザイン
グリーンのサブマリーナーたち。上から、アルミニウム製ベゼルインサートを備えた2003年発表の「16610LV」、次に2020年発表の新世代モデル「126610LV」、下が「マキシケース」を備えた2010年発表の「116610LV」。
1953年に誕生して以来、今日までその姿をほとんど変えていないサブマリーナーは、デザインの上で改良すべき点はほとんどない。美しいだけでなく、常に時宜にかなっており、時代遅れになることがないのだ。タイムレスな外観に貢献するのは、なめらかに反射するセラミックス製ベゼル、光沢のある黒文字盤、フラットなサファイアクリスタル製風防などである。サブマリーナーはTシャツのようなカジュアルなコーディネートにも、スーツにも合わせられる。
ただ、残念なことにこれらの特徴、特に、表面に反射防止コーティングを施していないフラットな風防は視認性をやや損なう要因となっている。とはいえ、風防の内側には無反射コーティングが施されているため、反射が目立つ場面はそう多くはない。サイクロップレンズがあることで、日付は正面からしか読み取ることができないが、サイクロップレンズは倍率が高いので、遠視のユーザーでも眼鏡をかけずに日付を確認することができる。
ケースの厚さが12mmのサブマリーナーはプロフェッショナルウォッチとしては薄く、エレガントに見える。しかも300m防水という、ダイビングにも十分に耐えうる防水性能を備えている。合計5つのパッキンを内蔵し、湿気を確実にシャットアウトするロレックス独自のトリプロックリュウズを搭載したケースが、ロレックスが以前から「オイスタースチール」と呼ぶ耐塩性の904Lステンレススティールで出来ていることも、ダイバーにとっては実用性が高い。
オイスターケースは昔も今も“牡蠣”のようにしっかりと閉じられており、高い防水性能を備える。その半面、ムーブメントを見ることができない。
サブマリーナーのもうひとつのハイライトは、極めて快適に操作できる120ノッチの逆回転防止ベゼルである。ベゼルは1ノッチごとにしっかりと噛み合い、噛み合う時のノイズも心地よい。ベゼルインサートに使用されているセラミックスは傷に強い。ベゼルの数字と目盛りはプラチナでコーティングされており、高級感のある立体的なゴールド製針とゴールド製アワーマーカーとの相性が良い。
発光力の強い蓄光塗料
新作では、暗所での視認性において改良すべき点はなかったようである。ロレックスの「クロマライト ディスプレイ」に使用されている蓄光塗料は極めて強く発光し、夕暮れ時や暗がりでも明確な判読を可能にする。青みがかった色はスタイリッシュで、目にも優しい。文字盤上の12時位置の三角形のインデックスと、6時と9時のバーインデックスは暗闇で時計の向きを知るのに役立つ。ベゼル12時位置の三角形の上に配されたゼロマーカーも明るく輝き、秒針のポインターで時計が動い
ていることを確認することができる。
着け心地も快適である。これは表面がなめらかな裏蓋、同じく内側がなめらかなオイスターロッククラスプ、そして、オイスタースチール製のしなやかなブレスレットによるところが大きい。ブレスレットのコマはひとつひとつがアーチ型に加工されているので、手首の形状によくなじむ。また、ブレスレットがねじれてもコマとコマの間隔が維持されるので、手首の毛が挟まることもない。
エクステンションを備える、実用的なオイスターロッククラスプは、新作では幅が1mm広くなっている。
指で簡単に持ち上がるセーフティーキャッチとその下に格納されているスナップ式レバーは、クラスプが不用意に開いてしまうのを防ぐ。扱いやすいリュウズやベゼル同様、クラスプの操作も簡単で、仕上げのクォリティも素晴らしい。ブレスレットとクラスプの側面はポリッシュ仕上げが施されており、表面はサテン仕上げになっている。ポリッシュとサテンのコンビネーション仕上げの美しさはケースも同様だ。
時計の場合、その後継機がリリースされて初めて、どこに改良点があったのか認識できることがある。これは、今回のサブマリーナーにも当てはまることで、プロポーションはより調和の取れたものとなり、ブレスレットの幅が広くなり、ラグがスリムになったことで、ケースは以前よりもエレガントに仕上がっている。サブマリーナーの系譜におけるあらゆる美の要素が、ここに集約された感がある。
新型ムーブメントは、今回テストした個体に限って言えば、ロレックスの厳しい精度基準を完璧に満たしているとは言えないものの、より実用的なパワーリザーブには感銘を受ける。テスト結果を総括すると、装着性、視認性、操作性、加工のすべてにおいて、ロレックスがベンチマークとしているレベルを満たしているのは間違いない。
すなわち、新世代のサブマリーナーは、ロレックスがこれまでに作ってきた中で最高のサブマリーナーと言って過言ではないのだ。
テストウォッチは控えめな外観ながら、サンブラッシュ仕上げのグリーン文字盤を備えていた先代モデルよりもプロフェッショナルウォッチらしい。
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